
〈1、4、7、10月の第2月曜日更新(祝日の場合は翌営業日更新)〉
バックナンバー
(第32回まで哲学雑誌『ロゴスドン』に連載)
高校野球シーズンである。7月8月はブライダル撮影の閑散期だから実に都合がいい。スポーツ大会の撮影を主な事業とするP社と委託契約を結んでおいて本当に良かったとしみじみ思っている。日本全国で高校野球が行われるので、希望次第でいくらでも撮影の仕事が入ってくる。ブライダルカメラマンにとって、スポーツ撮影の仕事は最高の副業である。
ところで、スポーツ撮影の仕事を通じて様々なプロカメラマンと出会い、多くのことを学ぶことが出来た。カメラマンという職業の幅の広さに感じ入っている。中には大学の写真学科や写真専門学校で基本を学んだ経歴はないが、独学で勉強して素晴らしい仕事をしている人もいる。そんな人といっしょに仕事をして思うことは、学校で学ぶことは、あくまでも基本に過ぎないということである。金と時間さえあれば誰にでも学校で学ぶことができるのだから、むしろ独学でいい仕事をしている人の方に優れた才能が多いようにも感じている。写真の学校を出て、その道に就職できたカメラマンの中には、かえってカメラマンとしての素質に欠けた人がいるようにも感じている。
カメラマンという職業に憧れて親に大金を出してもらって学校で撮影の基本を学び、その学校のコネで写真業界に就職できたカメラマンは多い。そんな人たちの中には、かなりの確率で美的感覚のあやしい人がいるような気がしてならない。特に、婚礼写真だけをスタジオで撮っているカメラマンの中にそんな人が多いと感じている。決まりきったポーズのみを何年も何十年も撮り続けていると、美的感覚は麻痺するのではないだろうか。そんなカメラマンに限って、学校で習った知識にしがみついている。仕事の出来ない社会人が学歴にしがみついているのと同様である。また、カメラマンという仕事は、カットハウスと似たところがあるようにも思っている。専門学校で学んでカットが出来る資格を取得しても、センスに乏しい人がカットをする店は流行らない。ダサイ人にカットをしてもらいたくない、と思うのは私だけではないだろう。
婚礼写真業界は美的感覚のあやしいカメラマンでも生き延びることができる、というその仕組みは単純である。ホテルの写真室は高額なテナント料を支払っている代わりに多くの特権を得ていて、カメラマンのセンスが良かろうが悪かろうが関係ないのである。そのホテルで挙式や披露宴をする客に選択の余地はないからである。スタジオ撮影だけならまだ我慢しようと思うのかもしれないが、そんなカメラマンがブライダルスナップも独占的に撮影するとなると、ゾッとしないだろうか。私なら絶対に嫌だ。ダサイ人にカットをしてもらいたくないのと同程度に嫌である。
ブライダルスナップだけは、新郎・新婦がネットなどを通じて、自らのセンスに合ったカメラマンを探し出し、その人と事前に会って話し合い、気持ちが通じ合えばそのカメラマンに撮影してもらうのがベストである。持ち込みカメラマン禁止の式場や披露宴会場には頼まないくらいの決意があってもいいのではないか。一生に一度の、一生涯残る大切な思い出のアルバムである。婚礼写真スタジオで撮った写真を寄せ集めたようなつまらないアルバムに高額なお金を支払う時代は、そう長くは続かないのではないだろうか。ホテルの専属カメラマンだといっても、数回研修を受けただけの、素人も顔負けのつまらない写真しか撮れない「プロカメラマン」がいかに多いかということも知っておいた方がいいと思う。婚礼写真業界の最大の危うさはそこにある。この業界で14間生きてきた私の誠実なつぶやきである。
116-0012 東京都荒川区東尾久2-45-6-7F (TEL)03-5901-5880
Copyright(c)Nu-su Publishing Inc. All Rights Reserved.