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令和時代以降のバス事業はどうなるだろうか。やはり、一番の問題は人手不足であろう。日本は2065年に総人口が8800万人になると予想されている(国立社会保障・人口問題研究所推計による)。乗客になる市民も少なくなれば、運転士や整備士の成り手も少なくなるのが当然である。乗客が少なくなればバス事業での収益を出せなくなり、バス業界への就職の希望者が減る。そうなると、やむなく自動運転化を今から考えて備えておく必要が生じる。自動運転は車間確保その他の安全性担保でAI技術との関係性が深い。故障可能性の正確な予測、エネルギーマネジメント等の側面では、ビッグデータの収集と分析も必要になる筈だ。
令和以降は、そうしたDX化を通じた自動運転化がバス事業の柱になる。また、そうしたエレクトロニクスを包含する観点で、電気自動車化&自動運転化が将来の基軸になることも間違いない。すでに電気自動車化は当たり前となり、ここにどのように自動運転化技術をかけあわせていくかが、令和初期の今の最大のテーマである。但し、検討プロセスでは技術志向が強く、バスの事業というニーズ志向の議論がいまだに弱い。モビリティの確保、自動運転時の各種事故の責任論等、法的な部分の議論も弱い。自然科学と社会科学の両側面から時に融合させ、電気自動車化&自動運転化の世界をいち早く日本に創出することが必要だ。
そこで筆者らは、バス事業者等を主体となる形をベースとし、自動運転技術等を活用したサステナブルな公共交通の実現をめざす「公共交通事業のDX推進コンソーシアム」を2026年2月25日に発足させた。東急バス株式会社、京浜急行バス株式会社、パシフィックコンサルタンツ株式会社、株式会社エヌケービー、そして筆者が所属する東京都市大学の産学の5者が本コンソーシアムを共同発起した。本コンソーシアムは、公共交通業界が抱える多岐に渡る課題に対し、公共交通の主要な担い手であるバス事業者を中心に企業・研究者と協働で、DX等による課題解決、持続可能かつ導入しやすいソリューションや普及モデルの開発、それらの業界全体への普及を目指し活動する。今後は、自動運転の啓発活動やその社会実装推進等、文理を問わずにサステナブルな公共交通実現のために活動する。こうしたコンソーシアムを中心に、バス事業者とバスの乗客の視点で自動運転のあり方を考えることにした。将来的には、こうした組織を超えた協働が実を結んでいくものと信じ活動を展開していく。
「公共交通事業のDX推進コンソーシアム」公式サイト
https://transport-dx.jp
共同発起者のプレスリリース
https://www.tcu.ac.jp/news/all/20260225-69164/
自動運転以外では、エコデザイン化の動きをどう加速化させるかという問題がある。路線バスの水準なら、電動バスで日常的な問題はない。問題は、長距離を走る貸切バスや、バス業界の数少ないドル箱である高速バスに用いる観光タイプのバス車輛のエコデザイン化である。さすがに通常の電動バスへの給電だけでは、円滑な走行がままならない。燃料電池は技術的にもこなれているとは言い難い。イニシャルコストにも懸念があり、従前からのエンジン技術を活かした方が現場も取り扱いやすい、との声がある。そこで、可能性が出ているのが水素エンジン車輛である。水素エンジン車輛は、水素を燃料として利用し、内燃機関で水素を燃焼させて動力を得る自動車である。水素と空気を混ぜて燃焼させ、その反応により得られるエネルギーでピストンを動かし、車輪を回す仕組みである。このプロセスで燃焼の副産物として水蒸気が生成されるものの、二酸化炭素は排出されずエコデザインに資する。
水素エンジンは、化石燃料を使用する内燃機関と比較し環境への負荷が少ないとされる。燃焼時に二酸化炭素を排出しない為、理論上「ゼロエミッション」と評価されている。特に都市部や環境規制の厳しい地域のバス車輛、長距離用途のバス車輛への援用も期待される。
水素エンジン車輛は環境負荷が低く二酸化炭素を排出しないだけでなく、既存の内燃機関技術を活用出来るために改造でも容易に使用することが可能である。従来のエンジン車輛のコンバージョンで延命出来る魅力もある。燃料補給が迅速であり数分で満タンに出来る。
水素の貯蔵や供給インフラの整備が必要であるが、三菱ふそうによる水素エンジン物流車「H2IC」は最大航続距離700kmを誇る。ディーゼルエンジンをベースにした為、初期投資が安く済む利点もある。更に、同「H2FC」は最大航続距離1200kmを実現し、燃料補給に要する時間も15分と非常に短い。こうしたトラック技術の応用で、水素エンジン型の高速バスや貸切バスにも期待が集まる。長距離車輛のエコデザイン化も鋭意進む可能性が高い。
バス車輛のバリアフリー・ユニバーサルデザイン化も進んで、ノンステップの路線バスやエレベーター付きの高速バスも普通のものになった。今後はエコデザイン化の更なる発展と自動運転化の推進が重要なバス業界のトピックになる筈だ。日本のバス車体の製造技術は高く、古くてもロバストな個体は多い。エンジン車のシャーシを電動ユニットに可変するレトロフィットバスも国内に増えている。そうした車輛のリサイクル及びリユースの技術も高まっている。SDGsの観点ではそうしたリサイクルやリユースのテクノロジー普及を支援する財政制度の構築も行政に期待される。行政は新車導入の支援に熱心に取り組んできたが一方ではリサイクルやリユースに弱く、今後はそうした分野の開拓に期待していきたい。

図2-22 東京都市大学で開発してきた水素エンジンバスのフロントビュー

図2-23 東京都市大学で開発してきた水素エンジンバスのリヤビュー

図2-24 試作当初の東京都市大学の水素エンジンバスの鉄道広告、社会の注目を浴びた。

図2-25 東京都市大学では水素エンジントラックの開発も実施
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