【連載】

日本のバス事業

西山 敏樹
(東京都市大学 都市生活学部 教授)

 

<毎月第1月曜日更新(祝日の場合は翌営業日更新)>

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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第13回

3. 新しいバスの世界を創る



3.1 電動フルフラットバスの挑戦
 2009年-2010年度にかけ、筆者は慶應義塾大学電気自動車研究室(湘南藤沢キャンパス)で大学教員としてのキャリアをスタートさせた。電動フルフラットバスの試作車の研究開発に従事した。これは2009年度の環境省「産学官連携環境先端技術普及モデル策定事業」に採択されたものである。我々の研究室では、今までのエンジンの部分をモーターや電池等に置き換える方式の電気自動車とは異なり、小型モーターを8つのホイールの内側に分けて配置する方式(インホイールモーター方式)を用いている。また、リチウムイオン電池やインバーター等を床下のアルミニウム製の箱に収納している。このように室内下部にモーター・インバーター・リチウムイオン電池等を格納し室内に出ることを抑えることで(この技術を「集積台車技術」と呼ぶ)、電車のモーター車のような画期的な大型電動フルフラットバスが完成した。今までのノンステップバスでは、最前列のタイヤハウスの上の座席周辺や中扉より後ろに雛壇上の段差がある。慶應義塾大学が世に出した大型電動フルフラットバスは、高齢者や障がい者の移動抵抗となるこの段差を無くして、環境負荷が無く誰もが利用し易いバスに仕立てられた。
 
 本試作車輌の開発は、産(いすゞ自動車株式会社)・公(神奈川県)・学(慶應義塾大学)の協働も大きな特徴である。バス製造、電気自動車の普及政策のプロフェッショナルと先端の電気自動車技術を持つ慶應義塾が協働し、大型(幅2,490 mm,長さ10,050mm,高さ2,730mm)の電動バスを開発した。筆者も、神奈川県下の12バス事業者の車輌運用を具に調べ、県内での実際の営業に耐えうる一充電走行距離(121km)と電池搭載量を実現した。今回の開発はバス事業者への調査と密なコミュニケーションの成果も反映されており、産公学の協力も含め、量産を視野に入れ現場のニーズもできるだけ取り入れ現実性を重視した。
 
 電動バスは、排気ガスや騒音の心配がないため、建物内にも乗り入れられ、市民のニーズがある早朝及び深夜の運行も可能である。従来に無いサービスも提供できる。ユニバーサルデザインとエコデザインの両立を実践し、バス事業の二大課題を一気に解決できる素地を持っている。実際のバス路線で評価を行いながら、当該技術の国際普及を目指している。
 
 大型電動フルフラットバスの試走評価実験も2011年12月から始めた。環境省の「平成23年度チャレンジ25地域づくり事業」に選定され、2013年度までの3カ年に亘って走行の評価を実施した。大きな特徴は、国内有数のバス事業者である神奈川中央交通株式会社や京浜急行バス株式会社が本事業に参画したことだ。実際の営業バス路線とほぼ同じルートで試走・評価を行い、技術的な改良点、今後の量産・普及に向けた課題から、事業性・採算性・波及性等のビジネス性の検証まで、学際的な評価を幅広い観点から実施した。
 
 2011年12月から2012年1月にかけては、神奈川中央交通と京浜急行バスで各々1週間の実証走行を行った。事業初年度の2011年度は、都市内路線として京浜急行バスのエリアから蒲田駅東口-羽田空港国際線ターミナル間を,郊外路線として神奈川中央交通のエリアから湘南台駅西口-慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス間の区間を選定し、走行試験を実施した。ドライバーもそれぞれの事業者の方々が、日々の営業運転と同様に担当した。全ドライバーにヒヤリングを行ったが、一般路線車輌との遜色がほとんどない、というのが総意であった。また、公募モニターにも試乗してもらい、利便性や快適性,安心感等の利用上の様々な評価を行った。慶應義塾の電動バスは、一般の路線バスの駆動系をコンバートしたものと異なり、小径タイヤ8個に1個ずつモーターを取り付け、バッテリー及びインバーター、コントローラーを床下の直方体のボックスに全て格納する「集積台車技術」を最大の特徴としている。結果、鉄道のモーター車の様な構造をとることで床面がフルフラットになって、エコデザインとユニバーサルデザインの両立が可能となる点に,生活者からの高い評価が集まっていることを改めて確認出来た。
 
 上記の14日間だけでも200人以上の試乗があり、一般市民モニター・バス事業者の皆様・マスコミの方等、多くの人に電動フルフラットバスの存在を認知頂けた。こうしたバスの試作研究開発では、動作の検証とユーザーの評価を重ねることが改めて重要と認識した。
 

図3-1 電動低床ノンステップバスのエクステリア

 

図3-2 電動低床ノンステップバスのインテリア

 

図3-3 電動低床ノンステップバスが建物の中を走るイメージ

 

図3-4 電動低床ノンステップバスを応用した小型バスのイメージ

 

図3-5 電動低床ノンステップバスを応用した高速バスのイメージ

 

図3-6 電動低床ノンステップバスを応用した2階建てバスのイメージ


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