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そして、バス業界も令和期に入る。この令和時代に入り、バス業界にとっての最大の問題は、「2024年問題」である。運転士の働き方改革として、退勤からつぎの出勤までの時間を最低9時間、推奨11時間にするという政策が導入されてから相応の時間が経過している。
当然、従前の運用数を満たしていくためには、運転士の数を増やす必要がある。ところが新型コロナ禍でテレワークが浸透し、安定的な4月と10月の定期券収入が激減した。更にモータリゼーションが加速した。結果的に路線バス運転士の年収はベテランの50歳代後半でも800万円に満たない水準だ。平均年収も500万円に届かない。こうした流れで、将来の家庭設計に不安を感じる30歳代から40歳代の路線バス運転士が激減した。今や、転職自体が難しい50歳代以上の路線バス運転士ばかりの事業者が全国的に増えている。我々はこうした厳しい路線バス事業を認知し、路線バス利用を増やし維持に協力する必要がある。
こうした社会的構図のもとで、路線バス事業者も最近は従前以上の努力をしている。路線バス事業者は、運転士の労働条件を改善しつつ新しい人材を確保するために努力している。給与の引き上げ、DX時代を受けてのAIを活用した効率化にも着手している。残業時間にも制限がかかり、従来の運行本数を維持することが難しくなっている。すなわち、路線バス運転士の確保をこれまで以上に進めるのか、本数を減らす等の対策を採らざるを得ないかの状況に、路線バス事業者は追い込まれている。地域の足である路線バスを守るため、各地で新たな取り組みが始まっている。路線バス事業者の事業改善を目指した様々な自助努力をここで見て行こうと思う。具体的にはつぎに挙げる四大ポイントについて見て行きたい。
(1)路線バス運転士の給与や支度金の捻出
(2)路線バス運転士の新しい人材の確保
(3)路線バスの効率的な運行方法の検討
(4)路線バスのキャッシュレス導入による負荷軽減
(1)路線バス運転士の給与や支度金の捻出
路線バス運転士の給与水準が低い点が2024年問題で改めて明らかになった。厚生労働省の賃金構造基本統計調査によると、路線バス運転士の年収は、全国の平均で約440万円であった。年齢が高くても入社後すぐは年収が300万円台後半に止まることも多いが、勤続年数が長くなると年収も上昇して、若いうちに入社して15年以上勤めれば、30歳代半ばで年収500万円水準になるケースも多い。しかし他の業界に比べると、低い給与水準となり離職者が多くなっている。そうした中で、長電バス(長野県)は、移住した路線バス運転士に100万円の支度金を支給して話題となった。こうした取り組みで、路線バス事業者が運転士確保に奔走するようになった。2025年度に入ってからも支度金提供施策は拡がっていった。
長電バスの制度は、路線バスの運転に必要な大型二種免許を持っている人が対象である。しかし、免許を持っていない場合でも70万円を支給し、「大型二種免許取得費用全額補助制度」を利用出来るようにしてある。また住居賃貸費用の半額を補助する制度(上限3万円/月)も提供され5年以上の勤務を条件とする。長野県内では大型二種免許保有者が少なく、県外人材の確保を強化する意図があった。このような取り組みは今後も他の地域に拡がるものと予想されている。路線バス運転士の待遇改善に向けた動きは歓迎されるべきであるが、一方で課題も多くある。既存の路線バス運転士にない新しい人事制度の導入で「社内の公平性」をどう保つかという問題が生じ事業者サイドにとっては新たな問題になっている。
(2)路線バス運転士の新しい人材の確保
次は、「路線バス運転士の新しい人材確保」の施策だ。路線バスを運転する為の大型二種免許は、2022年5月の制度改正で取得条件が大幅に緩和されている。以前は「21歳以上、かつ普通免許取得3年以上」という条件であったが特別講習を受ければ「19歳以上、普通免許取得1年以上」に変更された。この改正で若手路線バス運転士の育成がしやすくなり最短19歳から大型二種免許が取得出来るようになった。こうした政策支援は進歩である。
事実、最近では20歳前後の超若手の路線バス運転士が誕生するニュースも増加している。例えば岐阜バス(岐阜県)や豊鉄バス(愛知県)等で、若手の路線バス運転士が育成されて話題になっている。アルピコ交通(長野県)でも20歳の路線バス運転士の候補生を採用し、積極的に育成を進めている状況が報じられた。更に2025年度に入り、一部の路線バス事業者では、外国人の運転士や女性の運転士の採用も検討されるようになっている。特に、主婦層で大型二種免許を持つ人材を掘り起こす動きもある。日本人の女性の路線バス運転士は、徐々に増えて来ており良い傾向が見られる。しかし外国人路線バス運転士については、車内サーヴィスの慣習の違い等が課題となり、実際の採用がなかなか進まない現状がある。車内トラブル防止のために、運転士になる為の日本語レヴェルを引き上げるべきという意見も業界、また監督官庁の国土交通省に根強くある。新たな労働力の確保が進むが、多くの事業者は超若手運転士確保に手応えを感じ始めている。彼らを定着させることが問題解決の鍵となる。

図2-19 運転士の不足を車輛活用で対外的にアピールする事例すら増えて来ている

図2-20 運転士不足し各事業者が自動運転の研究に乗り出している(愛媛の伊予鉄バス)
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