【連載】

未来都市のモビリティ

西山 敏樹
(東京都市大学准教授)

 

〈毎月第1月曜日更新(祝日の場合は翌営業日更新)〉

 

 

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第12回

「電動トラクターの実現可能性の検討 (1)」

 

1.本研究の社会的背景と目標
 近年,二酸化炭素削減・低エネルギーを目指して電気自動車(電動車輌)の開発に,国際社会の注目が集まっている.例として,国際的に見れば,中国の深圳の様に年間5000台の電動バスを導入する都市も生まれている.電動バスのようなルーティングが一定の電動車輌であれば,一充電走行距離のシミュレイションも容易である.電気自動車の目下の弱点は電池である.電池の継続的劣化による一充電での充電キャパシティのシミュレイション技術は,各所で進んでいる.しかし,いまだに最適な手法が確立されておらず問題になっている.故にルーティングが決まっている車輌の電動化が,環境低負荷な電気自動車の普及に向け,重要な突破口になる筈である.
 筆者も,2009年度から2013年度にかけて,環境省の研究支援の下で,電動低床フルフラットバスの試作開発,および実運用評価の研究を中心的に実施した.  
 ここで,低床で環境低負荷な電動バスの実現可能性を実証して,大型電動車輌が国産の技術でも構築可能な事を証明出来た.そうした試作開発を進めて行くうちに,運輸業界から筆者のもとに,電動バスの各種技術の物流への援用を期待する声が届く様になった.そのニーズの高さを視野に入れ,電動バスの次の研究として,一般の電動トラックとは異なる最先端領域として,海上コンテナを運搬する電動のトラクターの実現可能性につき,研究する事にした.

2.モデルルートでの必要性能シミュレイション
2.1 世界的な電動トラクター開発の動向と課題
 世界的に見ると,電動トラクターの開発はアメリカが盛んである.特に代表的なバルコン社は,大型電動車輌の実績として,電動のトラックやコンテナヘッド,バス等の開発実績がある.すでに,それらの開発・販売が行われており,高性能電池の搭載を模索しながら研究開発を行っている.今後の展開としては,自社の駆動システムの普及,及び自社製品である電動トラクタ(XE20やXE30:図1,図2)の普及を目標に据えている.ただし,現状ではアメリカ国内でのビジネス展開が中心で,日本の運送事業者としてはサポート体制に大きな不安を持つ.XE20,XE30の性能は表1の通りに整理される.アメリカの走行環境は,日本と異なり比較的勾配が少ない為に,平坦地を軸にした仕様になっている.表4を軸に後述するが,東京近辺でコンテナ輸送が多い大黒埠頭から青海貨物ターミナルの29.1kmを総重量45,820kgで走行した場合に,補機類や冷・暖房類の使用も織り込み往復58.2kmの走行で必要電池量は281kwと推定される.これと表1のXE30の電池容量を比較してもユーザーとなる輸送事業者は不安を感じる状況である.さらに電池容量が大きいXE30はトラクターだけでも全長が7.5mあり日本の走行環境の規制である荷物台車を後に連結した時の16.5mを実現することも,これでは難しくなる.
 上記の3つの理由から,最先端のアメリカの電動トラクターを輸入しそのまま活用することは,現状では技術的・制度的な両側面から難しい状況である.
ゆえに,国内でのメインテナンスサポート体制や車長規制等を考慮し,現行のエンジン車輌を念頭に置き,電動トラクター車を開発する事が必要である.

図1 アメリカバルコン社の電動トラクターXE20


図2 アメリカバルコン社の電動トラクターXE30

 

表1 アメリカバルコン社の電動トラクターの仕様
(山間部・勾配が多い日本で実用可能か精査が必要)

 

表2 転がり摩擦抵抗値の算出
(μ*g:(Mf+Mr)から転がり摩擦抵抗を算出)

 

表3 シミュレイション上の空気抵抗の考え方


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