【連載】

漫画哲学

村田 唯

 

〈2、5、8、11月の第2月曜日更新(祝日の場合は翌営業日更新)〉

 

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(第63回まで哲学雑誌『ロゴスドン』に連載)

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第68回

『聖☆おにいさん』

 
 この漫画(作・中村光)の主人公はイエスとブッダ。世紀末を無事に終えた二人が、立川の安アパートをシェアして暮らしているという設定だ。ヨレヨレのティーシャツとジーパン姿でラーメンをすすったり、おばちゃんみたいに買い物したりする。聖人の威厳は無く、フリーターみたいな緩い生活ぶりだ。宗教のネタを漫画にしてしまって大丈夫? と思いつつも読んでみると実に面白い。新刊が出ると漫画本売り上げなNO.1になるのも納得だ。
 ただ、イエスとブッダに関する知識がないと、笑い処がわからないかもしれない。イエスが陶芸で石を焼いたらパンが出来てしまったり、銭湯の湯を赤ワインに変えてしまったり(奇跡の力)。ブッダが慈悲の心を見せた小学生の持っている鉢植えを急成長させて開花させてしまったり、昼寝をしたら涅槃と間違えた鳥が集まって来たり、3回怒らせると怖かったり(仏の顔も三度まで)。 
 イエスやブッダの特徴や生き方、習慣が、庶民的な生活に持ち込まれることで、様々なハプニングや笑いを巻き起こす。
 また、二人のほのぼのとした毎日の様子にも癒される。イエスはオンラインゲームの常連で、ブログを更新している。ブッダは家事が得意な節約家だが、家電製品が好きで、つい買ってしまう。趣味を楽しんで自由に共同生活している。とはいえ、世の中に器用にとけ込めているわけではない。例えばイエスは満員電車に乗ると、頭につけている茨の冠で周りの人に迷惑をかけてしまうし、ブッダは小学生に額のホクロのようなものをふざけて押されてしまう。しかし、スムーズに行かない部分は互いにフォローし合い、不思議な異文化コミュニケーションで毎日を彩る。
 普通に暮らしていく事は、簡単なようでいて難しい。自分なりの悟りを開き、困難な事にも負けずに暮して行ければいい。生きている事そのものが、修行なのだ。


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