【連載】

漫画哲学

村田 唯

 

〈2、5、8、11月の第2月曜日更新(祝日の場合は翌営業日更新)〉

 

『人生を考える漫画百選』

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第132回

『ムーミン・コミックス』

 
 NHK「こころの時代」で、ファンタジーは人々の生きる現実を照らし出し、悲しみや夢・希望に寄り添ってくれるものであり、その一例として『ムーミン』を紹介していた。
 作者トーベ・ヤンソンは戦禍の中「生きたい!」と日々祈りながら、また「こうあるべき」と決められた様々な事に抵抗しながら自分を守る中で、ムーミン谷や様々なキャラクターを生み出した。
 アニメやキャラクターグッズで馴染んできたムーミンに深い背景や想いがあったことはあまり知られていないのではないか。
 トーベは「スクルット」という言葉にこだわりがあった。「環境になじめず、社会の片隅で生きなければならない人達。どこにいても居心地が悪く、人の輪の外に立っている恥ずかしがり屋」という意味だという。トーベ自身は自分がスクルットだと自覚していた。ムーミン谷は様々な特性をもつスクルット達が自由に過ごしている谷なのだ
 彼らは誰にも束縛されず、一人でいる自由、自分だけの考えにひたる自由、自分の秘密を持つ自由を感じながら幸せに過ごしている。例えば、おばさんから冷たい仕打ちを受けて顔がなくなってしまった女の子。皆が冬眠している間に動き回り、偶然目を覚ましたムーミンに「春や夏や秋には居場所のない者も存台するんだよ」など色々な視点を教えてくれる女の子(一見男子に見える)。冷気をまとったちょっと近寄りがたい魔女など。
 誰もが安心して住めるし出ていくのも自由なムーミン谷。だからと言ってパラダイスというわけでもない。災害も別れもある。けれど、そこからの立ち上がり方、共存する心の持ちようも教えてくれる。
 近年色々な都市で「ムーミン展」が全国で開催される度に沢山の人々がムーミン谷の住人に会いに来て、物語をなぞる。トーベの生きた時代よりは、個性が尊重されたり、表現が自由になったり、性差別も減ったようにも思うが、まだまだムーミンは必要だ。もともとは妖精だというムーミン。次の時代もその次の時代も、人々に寄り添って欲しい。 


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