【連載】

新・コミュニケーション入門

船津 衛
(社会学者・放送大学教授)

 

〈毎月第1月曜日更新(祝日の場合は翌営業日更新)〉

 

ロゴスドン第76号

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第7回

贈る言葉、送る言葉、そして別れの言葉のコミュニケーション

 

「暮れなずむ町の光と影の中 去りゆくあなたへ贈る言葉」(武田鉄矢「贈る言葉」)
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 卒業式のシーズンですね。各地の高校の卒業式の定番ソングは、これまでの「蛍の光」「あおげば尊し」 から、「高校三年生」「学生時代」「卒業写真」「いい日旅立ち」に、そして「贈る言葉」「旅たちの日に」「さくら」「3月9日」「桜」「卒業」などに変化し、また多様化してきているようです。
 けれどもまた、このような贈る言葉の内容に共通した事柄が含まれているような気がします。贈る言葉において、「泣いたこと、悲しんだこと、喜び合ったこと」などの想い出が語られ、友達や「我が師の恩」への感謝が述べられ、「これからも共にがんばろう」と励まし合い、「いつまもでも一緒でいよう」と互いの関係の持続性が強調されています。このような点において基本的に大きな変化や違いはないように思われます。そこに別れを惜しみ、変わらぬ友情を誓う気持ちがよく表わされているといえましょう。
 この3月はまた、退職者(私もその一人ですが)との別れのシーズンでもありますね。そこでの送る言葉には、これまでの功績に対する感謝とねぎらいが述べられ、さまざまな想い出が語られ、去る者の今後の活躍と健康を気遣うことなどが含まれています。その場合、送る言葉全体としては、関係の持続性よりも、むしろ、別れを惜しみ、別れの悲しみを表現することが多くなされているように思われます。
 そして、最大の悲しみが表現されるのは、何といっても死者との別れの言葉である弔辞(ちょうじ)ということになりましょう。そこでは、一般に、突然の別れ、想い出、功績や人柄、故人への感謝、遺族への慰めと励まし、そして「安らかにお休み下さい。ご冥福を祈ります」が述べられます。そこにおいて永遠の別れと深い悲しみの言葉のコミュニケーションが行われることになります。
 弔辞を述べることは、それをもはや聞くことができない死者に向かって、聞くことができるかのように語りかける特別のコミュニケーションです。しかもまた、それは残された者へのコミュニケーションともなっております。死者と生者という質的に異なる存在に同時に伝え、その両方の理解と共感をうるものとなる必要があります。
 このような別れの言葉のコミュニケーションは大変むずかしいことです。とりわけ、悲しみを言葉に表わすことはきわめて困難な事柄であるように思われます。実際、言葉で言い表わすよりも、「涙かれるまで、泣く方がいい」のかもしれません。「涙を流した方が百の想いを伝えられる」ということもあるからです。贈る言葉、送る言葉、別れの言葉のコミュニケーションのあり方を改めて考えてみる必要がありそうです。
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「悲しくて悲しくてとてもやりきれない この限りない空しさの救いはないだろうか」(サトウハチロー「悲しくてやりきれない」) 


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